食物繊維




英語名:dietary fiber

食物繊維は、「人の消化酵素で消化されない、食物中の難消化性成分の総体」です。身体を構成するエネルギー源としての役割があまりないため、以前は無益な成分とみなされてきました。しかし、近年、さまざまな生理作用や効果が明らかになってきました。また、食物繊維と似た作用や機能を持つ食品成分の新たに発見され、食物繊維の定義自体を改めようとする動きもあります。そのため、国によって食物繊維の定義は異なります。

食物繊維が、水にとけない不溶性食物繊維と、水にとける水溶性食物繊維があります。

食物繊維を多く含む食品 100g中

そば(ゆで)2g パスタ(乾)2.7g 玄米ご飯1.4g ゆで大豆7g モロヘイヤ6g ごぼう5.7g ブロッコリー4.4g オクラ5g アボガド5.3g ひじき43.3g

体内での働き

不溶性食物繊維

腸を刺激して蠕動運動を盛んにし、摂取した食品の通過時間を短縮させます。便の量を増加させ、排泄を促します。これらの作用は、腸内環境を改善して、便秘や腸の病気の予防の役立ちます。

水溶性食物繊維

水分を吸収して膨張し、摂取した食品の、胃での滞留時間を長くさせます。また、小腸で等が吸収される際に、膨張した水溶性食物繊維によって糖が消化酵素と接しにくくなり、吸収に伴う血糖値の上昇が穏やかになります。また、コレステロールの吸収も妨げ、体外に排出されやすくします。これらの作用は、糖尿病や脂質異常の予防・症状改善に役立ちます。

どのくらいとればいいの?

食物繊維の摂取不足が生活習慣病の発症に関連するというデータが多くあります。便秘にどれほどの影響力があるのかは定かでありません。食物繊維の摂取と関連性が強いのは、心筋梗塞です。

食物繊維は、基本的に消化されずに大腸に達します。一部は腸内細菌によって発酵・分解され、短鎖脂肪酸などに代謝されることが、近年の研究で明らかになってきました。つまり、消化されないからといって、エネルギーにならないわけではありません。現時点では、1gあたり0〜2kcalと考えられています。

不足すると?

排便がスムーズになされず、便秘になります。1日1回排便されれば、食物繊維の量は不足していないと考えられます。

とりすぎると?

難消化性のオリゴ糖を添加した食品を大量に摂ると、便がゆるくなることがあります。

サプリメントなどで大量にとると、下痢を起こしたり、身体に必要な栄養素の吸収が妨げられると考えられます。

コラム1 食物繊維とオリゴ糖

オリゴ糖は、単糖類が数個繋がったものです。そのなかでも、私たちの消化管では消化しきれない、難消化性のオリゴ糖は、食物繊維に分類されます。

代表的なものに、フラクトオリゴ糖があります。そのまま大腸に届き、腸内細菌の栄養となります。特に善玉菌を増やし、腸内環境を改善してくれる働きがあります。

便秘の解消に効果的なオリゴ糖には、「おなかの調子を整えたい方に適する食品」として、厚労省にトクホ(特定保健用食品)として認可されているものもあります。また、カルシウムの吸収をよくする働きも知られています。ただし、摂り過ぎると便がゆるくなることがあります。

コラム2 ココア

ココアには、ポリフェノール、テオブロミン、食物繊維など、健康に良い成分が多く含まれています。食物繊維は、100g中24g含まれています。

コラム3 人工的な食物繊維

食物繊維の中には、人工的に作られたものもあります。代表的なものは、ポリデキストロースという水溶性の食物繊維。飲料などの加工食品に、よく使われています。食物由来の水溶性食物性繊維と同じ生理作用がありますが、その作用は天然のものよりも少ないと言われています。

コラム4 350gの野菜を摂ると…

「健康日本21」(厚生労働省による健康づくり運動)では、1日に350g以上の野菜を食べることが推奨されています。食物繊維、カリウム、抗酸化成分の充分な摂取は、循環器疾患やガンの予防に効果があると考えられています。これらの栄養素の摂取には、1日350g以上の野菜を食べることが有効だと推定されています。ちなみに野菜を350g食べると、約17gの食物繊維を摂ることができます。

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