トマトの起源と生態:トマトは夏野菜じゃない?

ミニトマト




トマトは家庭菜園でも大人気ですよね。
トマトといったら夏野菜のイメージが強いですが、夏場の日本の気候ではトマト栽培は容易ではありません。

「なぜ?」

トマトはほかの野菜に比べて栽培の歴史が短く、今でも起源地の気候の特徴を好んでいるようです。それなら、栽培環境を起源地気候に近づけてあげれば上手にトマト栽培ができるのではないでしょうか。

それでは早速トマトの起源からみていきましょう!

トマトの起源

トマトは、ナスやピーマンと同じ仲間で、ナス科に分類されます。

トマトの起源は中南米のアンデス西側の高原地帯です。

ペルーやエクアドル、チリ周辺諸国で栽培され、それがメキシコに伝わって交雑し、様々な変種、品種を生んだと考えられています。

※起源地にはメキシコ説もあります。メキシコ起源の場合はカリブ海に面したベラクルス州と隣接する標高2,000mのプエブラ州周辺といわれています。

1492年にコロンブスが新大陸を発見した時にトマトも発見され、ヨーロッパに広まりました。
ただし、最初は毒があると思われていて、食用になったのは18世紀ころからといわれています。
スペインやポルトガルなどによってヨーロッパにトマトが伝えられ、イタリアでトマトソースが誕生します。

日本に最初にトマトがやってきたのは17世紀後半(江戸時代)といわれています。その頃は「唐なすび」「唐ガキ」などと呼ばれていました。
ヨーロッパ同様日本でもはじめは観賞用で、食用になったのは明治以降のことなのだそうです。

大正生まれの祖母の話では、最初はトマトを赤くして食べるということを知らず、青いまま食べていたそうです。
日本でトマトを本格的に栽培しはじめたのは、カゴメの創始者、蟹江一太郎さんだといわれています。

※豆知識
「トマト」は、「ふくらむ果実(かじつ)」を意味する古代メキシコ語の「トマトゥル(tomatl)」が語源と言われています。

トマトの学名は「Lycopersicon esculentum」日本語に直訳すると「狼の桃」
なぜそう名付けられたのかは不明です。

トマトの生態

トマトの原産地は、アンデス山脈と太平洋に挟まれた、北は赤道直下のエクアドルからチリに至るまでの細いベルト状の地帯です。

野生のトマトはここで4月から12月まで生育します。この間の気温は、緯度によって多少異なりますが、平均して昼間は約21℃。夜間は14℃となっています。
東京の平均気温でみると、5月や10月頃の気温がトマトにとっては生育しやすいということになります。

南半球の起源一帯の地域では1〜3月は暑い時期。現地でトマトは冷涼期を選んで生育しているようです。

しかし、原生地の地域を限定しているのは気温ではなく、降雨量のようです。この地帯は年間の降雨量が100mm以下の無降雨地帯なのです!

なぜ無降雨地帯なのかというと、原産地はは太平洋岸からアンデス山脈に直接駆け上がる傾斜地になっています。太平洋の寒流で冷やされた空気が上陸して暖められ、水蒸気の保有力が高まり、雨が降りません。この無降雨地帯は標高2000m位まで続きます。

無降雨地帯だからといって、空気が極端に乾燥することはなく、ミストがかかったような状態で、湿度はかなり高く、夜間は80%以上、昼間は75〜80%もあります。

マチュピチュ

現在のトマトは、メキシコを始めとする各地での栽培、選抜、改良を繰り返されてきましたが、欧米での栽培は500年足らずで、比較的歴史の浅い作物です。

そのため、起源地気候の影響は今でもトマトに色濃く残っています。

日本では夏野菜としておなじみのトマトですが、トマトは本来高温・多雨を好まない植物なのです。
つまり、暑くて雨の多い日本の夏はトマトにとって過ごしにくい条件といえます。

茎から洋蘭のように不定根を出しやすいのも、空気中の水分を吸収するために便利だからだと思われています。
注意が必要なのは、多雨は好みませんが、空気中の湿度は65〜85%と言われ、過湿とともに極度の乾燥もよくありません。

本来は日が短くならないと実をつけない、短日植物ですが、現在の栽培種は日長と関係なく実をつけることができます。

むしろ、気温の影響を強く受け、気温が高すぎると最初の花が咲くのが遅れたり、花数が少なくなり、収穫量が減ってしまいます
また、気温が低すぎると、実が奇形になる確率が高くなるので注意が必要です。

トマト

参考図書「野菜の生態の作型 山川邦夫著」の紹介

それぞれの野菜の特徴や起源地の特徴を知れば、その野菜に合わせた環境作りを自分で考えることができます
そうなると、野菜作りがもっと楽しくなりますよね。
また、野菜も過ごしやすい環境で育てば本来の力を発揮し、病害虫にも強くなるはずです。
特に農薬の力を借りずに育てたいと考えるのであれば、この本はあなたの強い味方となってくれると思いますよ。

一般的な野菜栽培の本には何月に種を蒔いて、肥料をどのくらいあげて…ということがしっかり書いてあります。
しかし、どうしてその月に種をまくのかなど、その野菜の本質を理解するために必要な情報は省かれている場合が多く、このページを見てくれている多くの人はそんな解説書に物足りなさを感じているのではないでしょうか。

そんなあなたにオススメしたいのがこの本です。
この本には、野菜と日光や温度との関係、種のことなど幅広く解説している総論と、トマト、だいこん、きゅうり、いちごなど数十種類の野菜の起源や特性、作型について(春栽培、秋栽培などの方法)などが書かれている各論に分けて解説してあります。

著者の山川邦夫氏は、どこかの大学の教授ではなく、農林水産省の農業試験場を退官されてからは種苗会社が運営する園芸専門学校で教鞭をとっていらっしゃいました。
その経験が生かされてか、わかりやすく説明しようという生徒や生産者への愛情が伝わってくる本です。

わかりやすい文章で書かれているだけではなく、専門用語には索引がついてあり、平たく解説されています。

本について熱く語ってしまいました(笑)がそのくらいオススメです!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です