脂質




英語名:lipid

脂質とは、水に溶けず、有機溶媒に溶ける物質の総称。1gあたり9kcalで、炭水化物やたんぱく質の2倍以上のエネルギーを持っています。細胞膜の主な成分でもあります。

体内には、脂肪として摂取されます。中性脂肪のことです。中性脂肪には脂肪酸が含まれ、脂肪酸の種類によって、代謝の仕方や作用は異なります。

どのくらいとればいいの?

炭水化物の摂取量が増加すると、脂肪は減少。逆に、炭水化物の摂取量が減少すると、脂肪が増加します。つまり、脂質の摂取量は、炭水化物やたんぱく質の摂取量に左右されます。

脂質は、ダイエットの敵ではない?

脂質は、三大エネルギー(炭水化物、たんぱく質、脂質)のなかで、最も高エネルギーです。

1gあたりのカロリー量

炭水化物・たんぱく質=4kcal

脂質=9kcal

脂質は、少量で効率的にエネルギーを摂取できる栄養素です。

ダイエットで、脂質をまず減らそうと考える人は多いと思います。しかし、脂質を大幅に抑えて、炭水化物とたんぱく質からエネルギーを摂取しようとすると、たくさん食べないといけません。そうすると、胃に負担がかかります。

また、脂質は、腸内で分解されます。腸を刺激し、排便をスムーズにします。脂質が少なすぎると、便がかたくなって、排泄しにくくなってしまいます。

脂肪酸

脂質の「質」は、脂肪酸によって決まります。脂肪酸は、構造によって、体内での作用や役割が異なります。

脂肪酸の種類

脂肪酸には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。

必須脂肪酸

必須脂肪酸=リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸

体内で合成できない(または合成量が少なく、必要量を満たせない)。

食物から摂取する必要がある。

飽和脂肪酸

脂質を構成する成分で、肉や乳製品に多く含まれます。細胞膜の主成分。

肉の脂肪に多いステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸。乳製品に多いブタン酸。やし油に含まれるラウリン酸など。

体内での働き

エネルギー、中性脂肪、コレステロールの原料になります。

人間の体の皮下脂肪、内臓脂肪などは中性脂肪で、エネルギーが足りない時に分解されて使われます。中性脂肪の中で、飽和脂肪酸の割合が増えると、血液の粘度が高まります。

血液中のコレステロールの8割は体内で合成されます。飽和脂肪酸は、その原料です。肉の脂身はコレステロールをほとんど含んでいませんが、体内に摂取されるとコレステロールになるので、コレステロール値が上がります。コレステロールは、細胞膜や胆汁酸などを作る必須成分ですが、飽和脂肪酸は、LDL(悪玉コレステロール)を増加させます。

大切なエネルギー源ですが、生活習慣病のもとにもなります。

脂質が不足すると、どうなる?

血管がもろくなり、脳出血の発症率が増える!

飽和脂肪酸の摂取量が少ない人は、総死亡率、がん死亡率、冠動脈性心疾患(心筋梗塞、狭心症んど)死亡率、脳卒中死亡率が高くなるというデータが有ります。

脂質を摂り過ぎると、どうなる??

体内でのコレステロールの合成が進み、特に悪玉コレステロール(LDL)の量が増えます。

心筋梗塞や肥満、糖尿病の発症率が高まるリスクがある(※ただし、身体活動量やエネルギー摂取量、BMIとの関連性を充分に検討する必要があり、断言はできない)。

飽和脂肪酸を多く含む食品

「五訂増補日本食品標準成分表」の値をもとに算出 100g中の値

牛サーロイン(脂身つき)16.3g、牛バラ肉(脂身つき)15.8g、豚バラ肉(脂身つき)13g、ベーコン14.8g、鶏肉の皮(もも)16.3g、バター(食塩不使用)52.4g、ココナッツオイル84g、クリーム(乳脂肪)27.6g

コラム1 コレステロール値を上げない飽和脂肪酸!?

不飽和脂肪酸は、働きや作用がわからない部分が多く残っています。その中で注目されているのが、ステアリン酸です。ステアリン酸は、天然の油脂の中に多く含まれ、体内で不飽和脂肪酸であるオレイン酸に変化しやすいとされています。つまり、コレステロール値を上昇させにくいのです。現在も、継続して研究が進められています。

コラム2 飽和脂肪酸の多い植物油

飽和脂肪酸といえば、肉や乳製品のイメージが大きいですよね。でも、植物油にも多く含まれているんです。例えば、パーム油。ヤシの果肉から採れるパーム油で100g中47g、種子から採取するパーム核油で、100g中76.3g。ラードや牛脂よりも多く含まれているのです。

東南アジアでは、炒めものや揚げ物によく使われます。他の植物油よりも、凝固温度の高い性質があります。日本では、一部のマーガリンや乳脂肪分の低いアイスクリーム類などに使われています。

パーム油には、ビタミンAやビタミンE、抗酸化成分のトコトリエノールなどが豊富に含まれています。これらの栄養成分を活かしたまま精油した油も市販されています。

体脂肪のつきにくい油

脂肪酸は、炭素の数の多さによって、長鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸、に分かれます。食品の脂肪酸の多くは、長鎖脂肪酸です。しかし、牛乳や、やし油など一部の食品や母乳には、中鎖脂肪酸が含まれます。

中鎖脂肪酸は、食後の血中中性脂肪が増加しにくい特徴があります。調理油のなかには、この特徴を利用して、特定保健用食品になっているものがあります。それらは、一般の植物油より、体脂肪の蓄積が抑制されるとしています。

飽和脂肪酸とコレステロールの関係

牛や豚の脂肪は、飽和脂肪酸は多くても、コレステロール量はそんなに多くありません。

逆に、コレステロールの多いレバー類、魚卵、鶏卵などには、飽和脂肪酸はあまり含まれていません。コレステロール値の多い人は、いずれも控えたほうがいいですね。

不飽和脂肪酸

脂肪酸のうち、炭素の二重結合を含むものを不飽和脂肪酸といいます。さらに、二重結合の数によって、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分かれます。

一価不飽和脂肪酸

脂肪酸の炭素の分子結合の中に、1個だけ二重結合を含むものを、一価不飽和脂肪酸といいます。

主にオレイン酸やバルミトレイン酸が含まれます。

オリーブオイルやサフラワーオイルに多く含まれます。

酸化しにくく、過酸化脂質となりにくい。そのため、動脈予防効果が期待されている。しかし、摂り過ぎれば肥満の原因に。

多価不飽和脂肪酸

炭素の二重結合を2個以上含むものを多価不飽和脂肪酸といいます。構造によって、n-6系とn-3系に大別できます。

n-6系脂肪酸

リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸の3種がよく知られています。植物油、肉類、種実類、大豆などに多く含まれる。

n-3系脂肪酸

α-リノレン酸、イコサペンタエン酸(IPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)がよく知られています。

魚油、えごま油などに多く含まれます。血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、HDLコレステロール値を上昇させる作用があります。

コラム3 化粧品と脂肪酸?

オレイン酸やパルミトレイン酸は、人間の皮膚にも含まれている成分です。化粧品の原料としても使用されています。

コラム4 脳の半分は脂肪?

脳の乾燥重量の約半分が、脂質です。つまり、脂肪酸は、脳の機能にきわめて重要な役割を果たしています。最近は、DHAがサプリなどでも注目を集めています。アルツハイマー型認知症を予防・改善する効果があるという研究結果が出ています。DHAを含む母乳で育てた子どもの方が、DHAを含まないミルク(調合乳)で育てた子どもよりも認知機能が高いという結果が出ています。現在市販されている育児用ミルクには、DHAが添加されています。

トランス脂肪酸とは?

アメリカでは、トランス脂肪酸について、2006年に表示を義務付けられました。日本でも、その有害性が話題になっています。

トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種です。不飽和脂肪酸は通常液体ですが、固体に帰るときに生成されるのがトランス脂肪酸です。マーガリンやショートニングに含まれています。

欧米の研究では、LDLコレステロール値を上昇させ、HDLコレステロール値を低下させるなど、虚血性心疾患のリスクを高めることが示されました。

WHO(世界保健機構)とFAO(国連食糧農業機関)の協議会の報告書では、トランス脂肪酸の摂取を、エネルギー比で1%未満にすることが推奨されています。

2007年には、日本で内閣府食品安全委員会が、日本国民のトランス脂肪酸の摂取量を公表しました。1人1日あたり、0.7~1.3g、エネルギー比0.3~0.6%。アメリカでは5.8g、エネルギー比2.6%です。バランスの良い食生活を送っていれば、特に問題ないということです。

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